
| ぽつぽつ雨 ぽつぽつ雨。 要するに「傘がなくても大丈夫」な状態の雨だが、 私は雨の中でこいつが一番嫌いである。 降るなら降る。 止むなら止む。 どっちかはっきりしなさい! と思う。 例えば家を出るとき、ぽつぽつ雨が降っていて、 「傘がなくても大丈夫」だから傘を持たずに出て行くと、 後で本降りになってしまったりする。 また「本降りになるといけないから」と傘を持って出ると、大抵その傘はただの荷物になってしまう。 もしぽつぽつ雨と話が出来たら、 「その優柔不断をなんとかしなさい!!」 と、叱り飛ばしてしまいたいところだが、雨に怒ってみたところで、ただ不毛なだけである。 霧雨 霧雨も嫌いだ。 音もなく降ってくるのに、その雨量は案外バカに出来ない。 雨が降っているのを知らずに無防備に外に出て、 うっかり髪も衣服も濡らしてしまった、なんてことがたまにある。 が、腹が立つ割に許してしまうのは、霧雨が妙に絵になる雨だからだ。 夜の霧雨。 街灯が歩道をぼうと照らし、その歩道を少しくたびれたトレンチコートを着た 中間管理職風の細身のおっちゃんが歩く。 ただ歩くだけではなくて、ボケてきた100円ライターをカチカチやってたりすると、もう最高にいい感じなのだ。 霧雨には疲れたおっちゃんが良く似合う。 おっちゃんでなければいけない。 おっちゃんはおっちゃんでも、独身貴族ではいけない。 自分を粗大ゴミ扱いする妻子のため、ココロに流れる血と汗と、 そして涙を隠しながら働く、そんなお父さんであることが望ましい。 愛を語り合いながらそぞろ歩く恋人達だって、 霧雨の中に佇む疲れたお父さんの前ではかすんでしまうのだ(などと思うのは、ひがんだ筆者だけかもしれないが)。 闇を街灯の弱々しい光が照らし、銀色の雨が静かに降り注ぐ。 真冬の夜の霧雨よりも冷たい、世間の無情の雨に打たれながらも、 耐え忍ぶ哀愁の、その背中・・・・・・。 傘はもちろん、少し骨の曲がったコウモリ傘に限る。 天気雨 天気雨は困る。でも嫌いじゃない。 「今日お布団干してきたのに、降ってきたやんか!」 と云ってあわてて家に電話し、子供にお布団と洗濯物を中に入れるよう 指示するお母さん。 白いジーンズの裾を気にするお姉さん。 学生鞄を頭上にかかげて走り去る高校生。 青空と雨のミスマッチは、しかし少しだけさわやかである。 集中豪雨 風よ吹け、雨よ降れ―― 暴風雨の時は、傘なんて全然役に立たない。 傘がガードしてくれるのは、せいぜい頭くらいで、全身ずぶ濡れになってしまう。 傘が風で飛ばされそうになったりして、かえって危ない時だってある。 高価なブランド傘が、いわゆる「オチョコ」になって、泣くに泣けない人だっている。 そんな日に出かける用事なんぞあったりしたら、 もう気分は憂鬱を通り越して哀しくなってきたりもする。 が、実は私はこの雨が最も好きである。 酸性雨でさえなければ、人目さえなければ、 傘など無粋なものをさすのはやめにして、 滝に打たれる修行僧よろしく、ひたすら雨に打たれていたいと思う。 家を出るときはともかく、後数分で家に着く、といった時は 濡れネズミになったって一向に構わないのだ。 一度でいいから、頭の上から足の先までびしょ濡れになって、 自分に憑いている有象無象を洗い流してしまうのだ。 そしてワケの解からないコトバを思いっきり叫ぶのだ。 きっと、スッキリするだろうな。 雷雨 困ったことに・・・・・・たいした雨でなくても、 雷様は気まぐれにやってこられる。 この方は概して派で好きでうるさい。 雷光、ピカリッ。 そしてゴロゴロと・・・・・・いや、ゴロゴロと鳴っているうちはまだいい。 落雷のピシャーン! という音。 たまらなく恐ろしい。窓を閉めていても聞こえる。 さすがに天から轟く音は違う。 しかし、たぶんアレ、やってる方は快感なんだろうなぁ。 きっと、私みたいな臆病者が雷鳴を聞いてガタガタとふるえて 縮こまっているのを見て、喜んでいるんだろう(う〜ん、なんという性悪!)。 雷様がいらっしゃると、私は外ではアクセサリーや時計など、 金気のものをすべて身体から外す。 メガネのフレームにだって落ちると云うではないか! 貴金属など――いくら安物のシルバーリングであっても、だ――言語道断である。 家の中では蛍光灯もワープロもテレビも、家中の電気という電気を消し、 ふとんの中にもぐりこんで、ひたすら雷様が通り過ぎて行かれるのを待つ。 その様はまるで、大名行列に出くわして恐れおののき、街道でひれ伏す農民のようだ。 (ちなみに、私の知人の中には机の下にもぐりこむ人もいる) 雷は怖い。 天を裂く稲妻は美しい。が、その美しさを堪能する余裕がない。 離れた場所でも落ちるときは落ちると聞いてから、 雷の音を耳にすると、もうダメである。 誰かあの雷鳴を消去する術を発明してくれないかなあ、と思ったりする。 でも、それはムリなのかな。 どんなに科学が進歩しても、自然現象は甘んじて受け入れるしかないのではなかろうか。 それはそれでいいんじゃないかと思う。 天候操作まで出来るようになってしまったら――いつか、 そんな時代が来るかもしれないが――そうなってしまったら、 人類は終わりのような気がする。 理由はうまく説明できないけれども。 雷は怖い。 けど、それでいいや。 あとがき 雨ってイヤですね。 暗くてじめじめして。 あんまり長いこと降り続くと変な方々が元気に活動なさいますし。 足がいっぱいあったり、全然なかったりする方たちですけど。 いや、彼らにも生きる権利はありますからね、私の目につかないところで、 健やかに生活してくださればいいんですけどね。 集中豪雨が好きだと書きましたが、水害の多い地方の方は とてもそんなことは云えませんよね。 場合によっては生命を奪うほどです。 でも、「恵みの雨」ということばもります。 生命を育むのも、雨なのですね。 あなたの好きな雨は、どんな雨ですか? |